ももはな相談室(よくあるご質問)

 井上記念病院乳腺外科、川上診療所通院中の患者様の「乳がん」に関する質問やお悩み・不安を少しでも取り除くことが出来ればと思い、2021.7.1ももはな相談室を開設いたしました。患者様から頂いた相談内容に対し、先輩である「ももはな会会員」及び当院椎名医師・看護師等が外来掲示で回答する運用で始めました(相談内容は個人が特定出来ないようにしております)。乳がんで悩んでいる方にとって「ももはな会会員」の経験はかけがえのない「宝」であり、不安な気持ちを前向きに導いてくれる「力」が宿っていると思います。
 開始から10ヶ月が経過し事例が増えて参りましたので、ホームページ掲載することといたしました。一人でも多くの方の悩みが軽減し、前向きな気持ちになってくれると嬉しいです。
2022.6.1
ももはな会事務局
2024.3.9更新

患者様からのご質問と回答

1.術後の傷をどのように保護していますか?

♦会員さま
私は全摘後7ヶ月経しました。現在は傷の保護をしていませんが、手術から間もない頃はスポンジのような軽めのパッドで対応、今はもう少ししっかりした素材のパッドを入れています。

♦椎名先生
創部の痛み
乳がん術後の慢性疼痛は乳房切除後疼痛症候群(PMPS)と言われ、10年でも約2割の方でみられます。ズキズキした痛みだけでなく、ヒリヒリとした表面の神経痛やツキンとした鋭い痛みなど様々です。 痛みどめのお薬で対応ができますが、多くの方は希望するまでのものではないと話されます。天気の変動や気温との関係、また心身の疲れや不安などの影響を感じる人もいます。硬く締め付けが強い下着は避けましょう。違和感の強い部分にはミニタオルをはさんで直接下着が擦れないように工夫している患者さんもいます。

♦乳がん認定看護師 山口さん
椎名先生のコメントにあるように手術後の慢性疼痛は、術後何年経っても感じる不快な症状の一つです。衣類の摩擦や補正具の装着などの日常生活における動作で強くなることもあります。
日常生活の中で少しでも和らげることができるよう工夫をしていきましょう。
保湿
カイロを衣類の上から貼付する/お風呂に入って温める
運動
腕の曲げ伸ばしを行う/腕を挙げる
マッサージ
お風呂でマッサージをする/痛いところをさする
痛みの回避
痛みが生じやすい動きを避け、反対の腕を使うようにするパッドなどの補正具などで傷を保護することも痛みの緩和につながりますが、補正具が当たることで痛みや違和感が強くなるときは、傷にハンカチやミニタオルをはさんで保護するようにしましょう。

2.冷え対策を教えてください!

♦会員さま
・冷たいものを飲み過ぎない
・すりおろした生姜を味噌汁や紅茶に入れて飲む
・寒い季節は足首を温める(短めのレッグウォーマー)
・糖質を制限した食事にして、タンパク質を多く摂るようにする
・生姜、にんにく、根菜等、体を温める食材を使う
・首や足首、お腹等を冷やさないような衣服の工夫をする
・筋肉を使う。鍛える
・入浴で体を温める

♦椎名先生
しもやけ
しもやけは真冬だけでなく寒暖差のある日にも起きやすいと言われています。防寒が大事ですので外出時には手袋、靴下、耳あてをしましょう。家に帰ったらぬるま湯に手足をつけてあたためます。
保清、保湿をして家でも靴下やスリッパをはきましょう。
これらの予防法はタキサン系抗がん剤後のしびれのある方やホルモン療法中の冷え症の方も有効です。また冷え症に対しては漢方薬が効くことがあります。
しもやけは乳癌治療後に起きやすい訳ではありませんが、タキサン系薬剤使用中に似たような症状が表れることがあります。また他の病気の一つの症状として表れていることがありますので、続いたり繰り返す場合は皮膚科や内科を受診しましょう。

3.仕事(家事)の復帰や両立はいかがでしたか?

♦会員さま①【2021年1月に手術、2月~6月まで抗がん剤実施】
仕事内容や家族構成(家族関係)なども関係してくるとは思いますが…
私の仕事(職場)は小規模で仕事のスケジュールも比較的融通が利いたり(スケジュールを自分で立てやすい)、自宅でパソコンに向かってできる仕事もあったりしたので、抗がん剤のあとはスケジュールを詰め込みすぎないようにしたり、休み休みパソコンに向かったりできるようにしました。まあ、融通が利く代わりに休日でもメールや電話対応があるため、手術や抗がん剤で入院中も仕事のメールやり取りはありました。
職場の上司には治療スケジュール、自分の体調はその都度マメに伝えるようにしました。自分の体がまずは大事かと思いますので無理はしないで、マメに状態を職場の方へ伝えて相談するのがまずは大事かなと思います。
また、家のことについては、幸い夫の母と同居しており、嫁姑関係も悪くはないほうなので(笑?)、元々家事などかなり頼っていましたが、さらに頼りました。職場と同じく、治療のスケジュールや治療後の体調・副作用などは分かりやすく伝えました。職場の上司は医療関係者だったので病名や治療内容を伝えれば、ある程度のことは分かってもらえましたが、家族は素人ですし、治療の経験がなければわからないと思うので、自分が今こういう状態(副作用とか)だから、こうしてもらえたら助かる(ありがたい)…と言うことをハッキリ伝えたほうが良いのかなと思います。
副作用でだるい、食べられない時には、子供たちにもそれを伝えたら、そっとしておいてくれたり朝ご飯も自分でできる範囲でやってくれたりしました。感謝を伝えながら、副作用が落ち着いているときにはできる限りのことをする…ようにしていたつもり…ですが、治療が終わって半年たった今だから冷静にこんなことを言えるのかもしれません。手術を終えて、落ち着く暇もなく抗がん剤…でしたので、最初は余裕がなかったかも。
でも、今思えば治療と並行して仕事ができていたことはありがたいことだったのかなと思っています。

♦会員さま②
私は抗がん剤治療が始まる前に職場の方々に伝え、治療でお休みが増えてしまう事や、治療での体力にも不安があったので、迷惑かけてしまわないかとても不安でいっぱいでした。職場の方々の理解もあり、抗がん剤治療中は、3日程毎回有給をとり、4日目からは、全身痛や副作用もかなりありましたが、電車通勤で片道1時間半ほどですが、通ってデスクワークをしておりました。電車は混んでいるので、ヘルプマークを貰ってつけて、優先席が空いていたら、座って行きました。
ジーラスタ後の数日は、息切れや、骨?筋肉?の痛みで、家事も仕事も体が痛くて辛かったですが、休みながらゆっくり、できる事をしていました。仕事との両立は思ったよりできていたと思います。職場の理解もあり、私は8:30から17:00までのフルタイムですが、体力がきつい時は1時間早く上がらせていただいた事もあります。だんだんと、抗がん剤の副作用がでてくるパターンも慣れてきて、無理せず仕事もできるようになりました。私もまだ治療中ですが、初めは一部の人にしか言わず、治療をしていこうかと思ったのですが、職場の方々みんなと、上司にきちんと病気や症状の事を伝えました。その方が気持ちも楽になり、体力がない時も、理解して貰え、みんな優しく支えてもらえたので、気持ちの面でもだいぶ頑張れました。
体が辛い時もありますが、その時は絶対無理せず、体を休ませる事が大事です。私も同じ気持ちでしたが、やれているので、仕事との両立は、不安にならなくても大丈夫です!

♦椎名先生
回答していただいた方のように抗がん剤治療を行いながら仕事を続けられる人もいらっしゃいます。もちろん仕事は様々ですし、職場の人間関係やお金のこと、また副作用の出方もそれぞれなので一概に何が良いとは言えないのが事実です。
仕事に対して身体も気持ちも前向きになれないときは、しばらく休暇をとるのもよいと思います。一方で仕事をすることがむしろ気晴らしになると感じる人も多いようです。身体がつらいときには無理せず休めるように周囲に協力してもらうことが大事なようです。
ご本人が会社の産業医と相談した上で、治療状況を診療情報として当院から提供することも可能です。それにより治療に応じたより良い作業環境を作ることもできますのでお困りの時はご相談ください。

4.ホルモン療法中の副作用はどうでしたか?

これから始まるホルモン療法の副作用が心配です
タモキシフェンの副作用でしょうか、疲れやすく足の冷えとしびれが気になります。肌の乾燥も激しくなったと感じます
中途覚醒が続いており、ぐっすり熟睡が出来ない状況があります。習慣を改善出来た方のお話を伺いたい
ホルモン療法継続のメリット、デメリット、医療的な視点からのお話と継続されている方の身体不調への対応などのお話を伺いたい

♦会員さま
・アナストロゾール錠を服用していました。当初、副作用はほとんどありませんでした。しかし、4ヶ月経った頃から手足や腰の関節痛がひどくなり眠れなくなりました。それで、関節痛を和らげる漢方薬を2種類飲みました。しかし改善せず、別のホルモン療法に変更しました。その後、副作用はありません。
・私は術後7年経ちます。ホルモン療法を5年間行いました。特に副作用を感じることはなかったのですが、前回の検診時に骨密度検査をした結果、この数年で骨密度が下がっていました。また、貧血気味なのでそれは副作用なのか気になっています。

♦乳がん認定看護師 山口さん
ホルモン療法の主な副作用として、ほてりや発汗、のぼせなどの更年期症状があり、そのような症状に伴い、夜眠れなかったり、疲れやすさを感じる方もいます。バランスの良い食事を心がけたり、1日30分程度のウォーキングを行うなど運動習慣を見直したりすることで改善されることがあります。
また、アナストロゾールなどのアロマターゼ阻害剤では関節痛や骨密度低下などの症状が現れることがあり、それらに対しても運動や体操などが効果的と言われています。人によっては頭痛や気分の落ち込み、やる気が起きない、眠れないなどの症状が続き、睡眠薬や気分を安定させるお薬が処方されることがあります。
ご回答いただいた方のように治療薬を変更したり、一時的に休薬したりすることで改善される症状もありますので、何か気になる症状があれば医師にご相談ください。
上記以外にも、ホルモン療法により女性ホルモンの働きが低下することで、肌のうるおいや髪のハリ・ツヤがなくなったと感じる方もいます。再発予防に効果があるという薬と言えど、女性にとっては辛い症状です。ホルモン療法は5~10年間もの長期的治療になり、不安やストレスを感じる方もいると思います。また、その副作用は多様で、程度にも個人差があります。ほとんど副作用を感じない方や次第に軽減していった方もいますが、 日々の生活に関わる症状や見た目に影響が出る症状が続き、辛い気持ちを抱えている方もいるかと思います。辛い気持ちを聞いてもらうだけでも楽になるという方もいますので、何か気になることがあれば医師や看護師にご相談ください。

5.再発や予後に対する不安・・・どのように気持ちを維持されていますか?

・乳がんは10年目が目安ときいているので、まだ心配です・・・
・母が乳がんで骨転移になり、自分も心配、娘もいるので不安です・・・
・再発や予後への不安で気分がふさぐことがあります・・・


♦会員さま

どのコメントも、非常に気持ちわかります。
私はやっと手術後一年が過ぎたところで、半年に1度の受診が終わるとホッとすると共にまた半年先まで気持ちの変化がありながら過ごすのか…と重い気持ちになったりします。もう、これはなってしまった以上仕方のないことだと思うようにしています。私も、再発や予後への不安など…皆さんがどのように気持ちを維持されているか?気になりました。ひとまず、私がやっていることは…

①何か不安な症状があって気になる時は病院へ行く
この半年の間に「今までなかったところにほくろができて、大きくなっている気がする」「思い当たることがないのに、突然大腿の真ん中あたりが痛み出した」ということがありがんかな?骨転移だったら…などと考えてしまいました。でも考えていても仕方ないのでそれぞれ、皮膚科と整形外科に行きました。結果、何ともなかったので良かったのですが。

②ついつい、闘病のブログなど見てしまうが、あまり見すぎない!
治療前もそうでしたが、ついネットで色々検索してしまいます。闘病ブログなどステージ1からの骨転移等々、色々なことが載っていたりします。参考になるところがない訳ではありませんが、人は人、自分は自分、住んでいるところも違うのであまり見すぎないようにしたいと思っています。と、言いながら、たまに見てしまいます。

③自分が何のために元気でいたいか?考える
私は治療法を決めるとき考えましたが、何を優先するか、何のために再発をなるべく避けたいか?と言ったら、まだ子供の成長を見届けたいし、これからお金もかかるから仕事も続けたいし…ということが一番でした。そのためには気になる事があれば早めに先生に相談しながら、元気でいられるよう考えたいと思いました。

④同じ立場の人に話してみる
ももはな会もそうですが、入院中に知り合った方と時々連絡し、不安な気持ちをお互い吐露し合ったりしています。お互い「わかる~」となる事も多く、気持ちが軽くなります。参考になるかわかりませんが、私も皆さんの気持ちの維持についてお聞きしたいです。

♦椎名先生
再発に対する不安はどの方も、また時間が経っても皆さん感じているようです。
特に診察や検査の前になると心配が強くなると皆さんお話されます。
そのような時、皆さんはどのように対応していますか。
今回、会員さんからお答えいただいたアドバイスはどれも大事なことです。
ネットはしすぎると眼精疲労や睡眠障害の原因となり、むしろ気持ちが落ち着かなくなる可能性があります。心配事や自分の気持ちを同じ立場の人に話してみるのはよいことですね。ももはな会を通してご自身の気持ちを打ち明けてみて下さい。
専門家の先生のアドバイスには気持ちを整えるために、まず『行動に移してみる』ことが共通として語られております。
呼吸法や体操、些細な生活習慣など、ぜひ自分にあった気持ちの整え方を探してみてはいかがでしょうか。

6.術後の身体機能の変化について、どのように向き合っていますか?

♦会員さま①
私は、現在術後約1年半が経ちます。腕が上がりにくいことは今のところありませんが、時々痛んだり、痛痒かったり・・・。
その場所が、もともと癌がある場所に近かったりして不安になったりします。
様子を見ていいのか?早めに見てもらったらよいのか?
私も皆さんがどうしているのかお聞きしたいです。

♦会員さま②
私も同じ様な経験があります。
私は部分切除で、手術後この6月で3年になります。手術直後は腕もあがらず、痛みもかなりあり、教えて頂いた体操、リハビリを毎日一緒懸命していました。
数ヶ月でほとんど改善されました。
1年半ぐらい経ったぐらいから肩も上がらず、脇を切ったあたりから胸にかけてかなり痛みがでて痛み止めを服用しないと眠れない程になってしまいました。
服の脱着も難しく前開きのものでなくては着れなくなってしまいました。
診察の際に先生に相談しましたら、リハビリテーション科に紹介して頂きました。
半年以上リハに通い、ほとんど改善されました。自分で勝手に治ったと思って家でのリハビリ、体操をしなかったのがネックだったと思います。日常生活の中でのリハビリが大切なのだなぁとつくづく思いました。
乳がんを患ってしまったと落ち込みがちですが、私の場合は乳がんのおかげでリハビリ、体操をして少しスマートになれたなぁと思う様にしています。痛みや症状の変化があったら早めに先生に診察して頂くといいと思います。

♦理学療法士吉見さん
術後、放射線治療やホルモン療法、抗がん剤治療でも起こる腕のあげずらさがあります。また、手術側の腕を大事にしすぎて動かさず、腕があがらなくなった方もいらっしゃいます。
加齢とともに肩関節周囲の運動制限が生じやすくなるので、ストレッチやラジオ体操がお勧めです!
(ストレッチの方法はももはな会だより第3号に掲載)
ストレッチはお風呂上がりなど肩周辺の筋肉が十分に温まった状態で行いましょう。

7.術後転移検索について

現在通院している病院では、手術後に全身画像検査は行わないと説明されました。
例えば転移した部位が手術可能な場所で、自覚症状が出現する前の早期に転移をみつけることは意味がないのでしょうか?

♦椎名先生

全身画像検査をフォローに加えても死亡率低減効果は無く、むしろ放射線誘発がん、偽陽性、費用が増えるデメリットがあり、一般的には勧められません。しかし、全く意味が無いというわけではありません。「Oligometastatic disease(少数個転移)」は、手術も有効との報告あり、偶発的に早期肺がんがみつかることもあります。
同じステージの患者さんでも再発リスクは個々で異なり、再発や検査に対する心配や健康管理に対する思いも様々です

8.術後10年以降の検診について

現在、半年に1度の診察となっております。先日の受診の際「術後10年過ぎても検査は続けた方が良いですよ」言われました。
術後10年過ぎたら、その後も病院で診て頂けるのでしょうか?
それとも市町村で行っているがん検診に行くのでしょうか?

♦椎名先生

乳がんの再発の9割は10年以内と報告されておりますが、その後に再発される方もおります。また、新しく発生する乳がんを早期発見する意味でも乳がん検診は毎年継続されることをお勧めします。
一般の方と同様に市町村の検診を行ってもよいですし、当院及び川上診療所では10年以降も定期検査を継続することができますので、どうぞご利用下さい。

9.タモキシフェン服用後の月経異常について

ホルモン陽性乳がんで昨年手術し、年末よりタモキシフェンを服用しています。
すぐに月経は止まったのですが、今年の7月、9月、10月と月経ありです。この状況をどう判断したらよいでしょうか?

♦椎名先生
タモキシフェンそのものは月経を止めるお薬ではありません。しかし、今回のアンケートでも2割以上の方が月経異常を訴えられ、そのうち月経が「止まった」と答えた方が6割以上みられました。月経が一時的に止まった原因としてタモキシフェンが何らかの影響している可能性はあります。その後、月経が再開したとのことですが、 この時、不正出血ではないかと心配される方も多く見受けられます。25-38日に周期的にみられれば生理と思われます。

基礎体温測定では高温の黄体期の後に体温が下がり、生理がみられることから不正出血との鑑別に有用です。
また、強い下腹部痛や量が多いなどの異常があれば一度婦人科受診をお勧めいたします。

10.タモキシフェン服用後の症状について

タモキシフェンを服用し1ヶ月経過後、息苦しさを感じました。
現在、抗HER2治療をしているので、どちらの副作用かわからないとのことで、その後1ヶ月タモキシフェンを中断しました。
しかし、中断してもあまり息苦しさが変わらないことや心臓の機能もそれほど衰えていないことなどからタモキシフェンを再開しました。

・タモキシフェンの副作用として息苦しさ(気道が狭くなる感じ)はよくある副作用なのか
・副作用だとしたら1ヶ月の中断では症状改善しないのか
・副作用だとしても息苦しさを我慢してタモキシフェンを継続した方がよいのか

♦椎名先生
タモキシフェンの副作用で息苦しさを感じることはまれですが、間質性肺炎を来すことがあり、注意が必要です。1ヶ月の中断で十分血中濃度は下がるので改善しないのであれば別の原因も考える必要があります。抗HER2薬による間質性肺炎や放射線治療による肺臓炎も鑑別としてあげられ、胸部レントゲンや採血で異常が無いか確かめるとよいでしょう。
主治医の先生に相談されることをお勧めします。

11.乳がん治療中のニューロパチー症状について

抗がん剤+放射線治療の場合、ニューロパチー症状の度合いに変化はあるのでしょうか?
それとも、抗がん剤によってのみと捉えて良いのでしょうか?

♦千葉大学医学部附属病院/脳神経内科 澁谷先生
放射線治療の場合、照射野に末梢神経が含まれていて、ある程度以上の照射量があれば照射を受けた末梢神経に放射線性ニューロパチーという神経傷害を生じる可能性はあります。
照射部位以外の神経に関しては、ほぼ関係ありません。

♦椎名先生
より患側(照射側)の症状が強い場合には放射線治療や手術の影響もあると思います。
また、放射線治療も乳房のみの場合は影響が少ないと思いますが、腋窩や鎖骨上窩を含めた広い照射となれば上肢への神経傷害が起こる可能性は高まると思います

12.しびれの治療期間について

抗がん剤の種類によって異なると思いますが、治療を開始しておおよそどの位の期間でしびれの治療を終えるのでしょうか?

♦千葉大学医学部附属病院/脳神経内科 澁谷先生
これについてはお答えが難しいです。
抗がん剤による神経傷害がその程度であったのかが大きく影響すると考えますが、抗がん剤の種類や投与量、その患者さんが持っている併存疾患や栄養状態、更には飲酒量等にまで左右されうると考えます。
マスデータとしては、抗がん剤により約7割の患者さんが末梢神経障害症状を 呈し、6ヶ月以降にも後遺している方は約3割と言われています。

♦椎名先生
治療中の症状が強い方の場合に症状の継続期間も遷延する傾向にあります。
通算の投与量が神経傷害に影響しますので、治療中の症状が強いときには無理せず主治医と投与量についても相談するとよいでしょう。

13.抗がん剤治療中は白血球値が増えるの?

♦椎名先生
抗がん剤治療中に白血球が増える原因として、最近最も多いのが好中球減少性発熱の予防で使用されるジーラスタの影響によるものです。
特に2週間毎のレジメンを行っている方は著明に高くなっていることがありますが、心配はいりません。
ペグフィルグラスチムを使用していない場合は感染などの炎症の存在を疑いますので、医師から何か症状がないか問診されることがあると思います。

14.カラーリングやパーマなど、乳がん発症リスクが上がるの?

2022年頃から縮毛矯正は子宮がん発症リスクを高めるとニュースを見ました。
カラーリングやパーマなど、乳がん発症リスクがあがるのでしょうか?
 
♦椎名先生
Sister Studyは米国の国立衛生研究所による乳がんの原因となる環境、遺伝子、経験を同定するための大規模なコホート研究であります。
2003-2009年までに登録された35-74歳の女性が対象となり、健康状況と経験に関する様々なアンケートに答えることになっています。
最近、ニュースとして報道されているのはこのSister Studyの結果が発表されたことによります。これらの論文を実際に読んでみました。

1)Sister Studyでは登録前の1年間にカラーリング、縮毛矯正、リラクサー、パーマの使用経験と頻度についてアンケートがなされました。
子宮がん発症について縮毛矯正は1.80倍のリスク上昇があり、さらに年4回を超える頻度で施行した場合は2.55倍のリスク上昇が認められました。カラーリングやパーマに関しては子宮がんの発症と関連はありませんでした。

2)乳がん発症について縮毛矯正は1.18倍のリスク上昇と報告されています。
さらに年4回を超える頻度で使用した場合、リスクは1.31倍に上昇しました。
他の人に行うことに関しても1.27倍のリスク上昇があったようです。
カラーリングの使用に関しても永久染毛剤でわずかながら1.09倍のリスク上昇がありました。

3)また10-13歳の思春期の使用頻度との関係を調べた別の論文では縮毛矯正とパーマは閉経前の乳がんの発症をそれぞれ2.11倍、1.55倍に増加させました。
しかし閉経後の乳がんの発症には関わりませんでした。

これらの論文からは乳がんのリスクは子宮がんほどではないこと、縮毛矯正はカラーリングやパーマよりリスクは高いことがわかりました。
しかし、論文をよく読むとこれらは個人で使用したものの検討であること、また年代が2003-2009年頃1)2)(思春期の検討に関して言えば1938-1987年頃となる3))の話であることを念頭に置く必要があります。

毛髪関連の化学製品にはホルムアルデヒドを放出するものやパラフェニレンジアミン、4-アミノビフェニルなどが含まれており、これらが発がんや内分泌攪乱に関わっているのではないかと言われています。現在では徐々にこれら化学物質の含有を制限する流れになっていますが、各国ごとに対応は異なっているようです。


発がんを心配する意味ではこれら化学製品の使用を避けるのが良いと思います。
しかし、食品や放射線など現代において全てのリスクから避けて生きていくのはなかなか難しい時代となっているのも事実です。また美容や外見、ファッションに対する思いは人それぞれであり、それを大事にするのも人間ならではと思います。
リスクを知った上で上手く生活に取り入れていくことが大事であると思います。
例えばこれら毛髪関連製品の場合は、個人使用ではなくサロンでプロに行ってもらうこと、頻度を減らすこと、思春期の頃には使用しないこと、より安全性を重視している製品を選択することでかなりリスクは減るのではないかと思います。

1)J Natl Cancer Inst114(12) 1636-1645 (2022)
2)Int J Cancer147 383-391(2020)
3)Int J Cancer148 2255-2263(2021)

15.ホルモン療養中、欝病になった場合の対処法について

乳がん術後でホルモン療法中の患者様は、女性ホルモンの減少によりメンタルに影響を受けやすいと思います。
治療の影響や再発への不安などによりメンタル改善出来ず、うつ病になってしまった場合、公認心理士のカウンセリングでお薬を飲まず対処出来るかなど、対処方法を伺いたいです。

・乳房手術をした時点でかなりメンタルダメージが大きい・・・
・マインドフルネス、漢方、運動でもメンタル改善出来ない・・・
・心療内科受診しお薬の力を借りることを躊躇してしまう・・・

♦公認心理師 野間先生
鬱になってしまった場合は、標準治療が抗うつ薬等の薬物療法です。
この基本的理解があるため、お薬を一切頼らずということは医療従事者としてお勧めしかねます。一方で、心理師としてもう少しお答えできることが3つございます。

① 抗うつ薬や抗不安薬、所謂、精神科治療薬について抵抗や躊躇等していること自体を精神科専門医にご相談してみることも1つです。

② 漠然とした不安感や恐怖感が、どんどん極端な考えとなり、よりネガティブな思考・気分が増すようなネガティブキャンペーンの繰り返しがある場合、まずは心理師にじっくり話を聞いてもらうことも有用と思います。
ここで言う有用:気持ちなどにおさまりがつく。自分の考えと距離が取れる
↑これらが期待出来そうです

③ 公認心理師等のカウンセラーを選ぶコツとして・・
あくまでも個人的な見解です。「認知行動療法やっております!」「対人関係療法やっております!」と、ハナからカウンセリングで行う心理療法を決めているカウンセラーより、相談者の方のお話を聞いてから、その方の状況と状態に合う、又はその方のニーズに応えてくれる支援者を選べたら良いなと思います。

理由:人のもつ心理状態の背景は本当に複合的です。各種心理療法により心身のコンディションの改善等を期待する方もいれば、ただ今の私の話を聞いて欲しい等、様々な場合があります。『今、必要な支援は何か』を、よく聞かなければわからないことが多いです。そのため、初めから心理療法等、支援方法を決められるよりも『今,必要な支援は何か』を、一緒に考えてくれる支援者にであってもらいたいなと、個人的には思います。

16.術後10年で経過予定です。今後の注意点などについて

私は術後9年経っており、あと半年何事もなければ10年経過します。がん患者であることは、頭の片隅にずっとあると思います。
今後も何か気をつけることがあったら教えて頂きたいです。
 
♦東京慈恵医科大学乳腺内分泌外科 伏見淳先生
気をつけることは、バランスの良い食事と定期的な運動習慣による適正体重の維持です。いずれも当たり前の事ですが、なかなか出来ません。誰かと一緒にやるとしやすいです。
ご家族や親しいご友人と一緒に是非継続してみて下さい。