診療科・部門紹介

乳腺外科

各部門紹介・当院の特色

検査部門(各分野で専門の技術を習得したスタッフが多数在籍)
乳腺の検査は主にマンモグラフィーと乳腺エコーを組み合わせて総合判定しますが、当院の検診マンモグラフィー撮影認定診療放射線技師は8名、乳腺(体表臓器)専門の超音波検査士は8名おり、主に女性技師が検査を担当しております。多くの技師がそれぞれの経験を共有することで、多彩な表現形を持つ乳腺疾患に柔軟に対応しております。乳がんの可能性が否定できない病変は細胞診や組織診を乳腺外科の医師が直接行います。診断は国際細胞検査士の資格を持つ専門家と病理医が行っております。乳腺症や乳腺炎、線維腺腫などの良性疾患から乳がんまで幅広く対応可能です。

手術部門(アットホームな雰囲気作りで優しく患者さんを支えます)
手術前は緊張する患者さんが多いですが、事前に手術部の看護師と面談することで自然と心配な気持ちが和らぎます。当院の手術スタッフはアットホームな雰囲気作りを心がけております。安心していただけるように入室から退室までお声かけしながら皆様を支えます。
手術は術前に3D-MRmammmographyと造影CTを行うことで乳がんの拡がりの程度を精密に診断し切除範囲を決めます。さらに患者さん個々の乳房の大きさや乳腺濃度を考慮し手術方法を決定します。同じ切除量でも乳房の大きさや乳腺濃度により術後の整容性が大きく変わることを報告しております(Shiina N, Sakakibara M et al. Europian journal of Surgical Oncology.2016. 下図参照)。これら術前の評価により乳がんの根治性と乳房の整容性を高いレベルで調和できるように努力しております。

 
 

現在、当科では乳がんの約6割の症例で乳房温存療法が選択されますが、乳房温存療法では根治性や整容性の担保が難しいと診断する場合は乳房切除を勧めます。乳房再建も行っており、当院では乳房切除の際のティッシューエキスパンダーの挿入とインプラントを用いた乳房再建を行っております。自家組織再建は連携する施設をご紹介させていただいております。
抗がん剤治療(頭皮冷却装置で脱毛予 手指圧迫や手指冷却で合併症を最小限に)
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乳がんの薬物療法は化学療法や内分泌療法に加え分子標的療法や免疫チェックポイント阻害剤など新規薬剤の登場で日々進歩しております。最新の根拠に基づいた「乳癌診療ガイドライン」に準拠した治療を推奨しておりますが、患者さんの個々の状況に応じて治療方針を相談できます。通院治療室では専属の看護師がおり、安心して治療を受けられます。
当院で行われる主な副作用対策
1.頭皮冷却装置
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「脱毛」に対しては当院ではPAXMAN Scalp Coolingシステム®を用いた頭皮冷却を行うことができます。頭皮を冷却することで毛母細胞への抗がん剤への影響を少なくし脱毛を防ぎます。当院では県内で最も早く頭皮冷却装置を臨床で導入し、患者さんのQOL(生活の質)の向上に努めております。当院では2022年9月までに47人の患者さんが頭皮冷却を利用しました。毛量が50%以上残存する『非脱毛』と判定された患者さんは23.4%にみられました。また治療終了時にウィッグを使用していない方は53%でした。気分不快、寒気、頭痛などの合併症も見られましたが、93.6%の方がこの治療を完遂できており、使用した人の感想として装置の使用について『満足』『まあ良い』と回答した人は78.7%、他の人に『ぜひ勧める』『たぶん勧める』と回答した人は87.2%でありました。

頭部冷却を行い非脱毛だった方

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診療前
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診療後
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診療前
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診療後
2.手指圧迫/手指冷却
「手足のしびれ」に対しては日本人女性の乳がん患者さんで効果が示されているサージカルグローブテクニックを導入して予防に努めております。グローブは当院にて用意いたしております。
「手指の色素沈着」や「手足症候群」の予防目的に手指冷却も取り入れております。
従来は爪の変色や剥がれを予防する効果がみられております。
サージカルグローブ
手指冷却
3.制吐剤
「吐き気」は患者さんを悩ませる副作用の一つでしたが、数種類の有効な制吐剤の登場により、従来より緩和されてきております。また、治療に対する不安も吐き気を誘発することが知られております。患者さんの不安が少しでも軽減されるよう応対して参ります。
4.G-CSF製剤
「好中球減少による発熱」は治療後1-2週間の間に起こる副作用ですが、発熱の頻度が高い治療やリスクの高い患者さんにはG-CSF製剤の予防投与を勧めております。発熱で悩む患者さんは少なくなり、安全に治療を行うことができるようになりました。また『dose-dense療法』としてより密に抗がん剤を投与することで効果を最大限まで引き上げることに成功しております。
5.中心静脈ポート
「血管痛」は薬剤が通った血管に沿っておこる炎症から生じる痛みです。後にその炎症は血管に添った色素沈着をもたらします。対策の一つとして当院では中心静脈カテーテルポートの留置を行っております。採血も行うことができ治療中の苦痛の軽減にもなります。当院では小型のポートをより安全で目立ちにくい上腕(二の腕)の内側に留置しております。

放射線治療(自宅近くの放射線治療施設と連携して行うことができます。)
乳房温存手術後やリンパ節転移が認められた乳房切除後の方に行います。局所再発の抑制効果だけでなく死亡率の低減効果も期待できます。放射線治療は当院では実施しておりませんが、適応のある方はご自宅から通いやすい近隣の専門施設をご紹介させていただき連携をとっております。主治医にご相談ください。
栄養指導(乳がんと食事の関係を理解 栄養士があなたの食生活をチェック)
乳癌診断後の肥満度上昇が乳癌再発のリスクを高めることは『ほぼ確実』(乳癌診療ガイドライン2022年版)とされております。当院では入院中に管理栄養士により皆様の食生活をチェックし、食事指導を行います。乳がんの再発予防と生活習慣病の予防に努めております。
リハビリ指導(乳がんと運動の重要性を知る 理学療法士が術後をサポート)
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乳癌診断後の身体活動を高く維持することは乳癌死亡リスクを減少させるため『強く推奨』されております(乳癌診療ガイドライン2022年版)。当院でも入院中のリハビリテーション指導にて積極的な運動療法の提言を併せて行っております。また手術や薬物療法の副作用による関節拘縮に対しては、リハビリテーション科の専門スタッフのサポートが受けられます。
リンパ浮腫外来(リンパ浮腫セラピストが生活指導を含めた複合的治療を提供)
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腋窩リンパ節郭清後のおよそ1-2割に上肢にリンパ浮腫が発症します。生活習慣改善によるセルフケアと体重管理、圧迫療法とその下での運動療法による複合的治療がリンパ浮腫の重症化予防に効果的です。腋窩郭清の術後にはリンパ浮腫予防と早期発見のための指導を行います。またリンパ浮腫セラピストが重症度に応じた治療法を皆様の生活状況に応じてご提案いたします。
川上診療所との連携(県内有数の受診者数を誇る診療所との連携)
当院は稲毛区の川上診療所と連携しております。医師やアドバイザーなどのスタッフ間交流も行っております。川上診療所は全国的にも有数の乳がん検診の専門クリニックです。当院術後のフォローも行っていただけますので希望される方は主治医にご相談ください。
ももはな会(患者さん同士悩みを相談できます。イベントや勉強会も開催)
当院と患者さんと家族、友人、医療従事者が集う「ももはな会」が川上診療所と合同で定期的に開催されおります。「ももはなだより」では乳がんに関する情報をお届けしたり、「ももはな相談室」では様々な悩みにすでに経験された患者さんや医療スタッフから回答がなされます。乳がんに関する情報交換はもちろん充実したサバイバーシップを追求した活動が行われています。
これらの取り組みは、乳がんに長期に向き合う患者さんが安心で前向きに生活できるように支援する目的で行っています。井上記念病院乳腺外科はこれからも患者さんによりそった乳がん診療を心掛けてまいります。

ももはな会(川上診療所)