診療科・部門紹介

乳腺外科

乳がん診療について

乳がん診断までの流れ
マンモグラフィーと乳腺エコーを組み合わせて総合判定致します。異常がない、または明らかに良性と判断される場合は1年毎の検診をお勧めしております。異常があるが症状や大きさや形状などから早急な判断を必要としない場合、およそ半年間の経過観察期間をおき、その変化を含めて判断することがあります。異常があり、乳がんを疑う場合、あるいは良性であることを確認する必要がある場合、針生検や細胞診を行います。
乳がんを見逃さないことは最も大事なことですが、患者さんに不要な心配や侵襲的な検査をできるだけ少なくする乳腺診療も心掛けております。
診察までの流れ
高濃度乳房とは
高濃度乳房の問題が取り上げられることが多くなってきたことに対応して、希望される方に乳腺濃度の通知を行っております。高濃度乳房とはマンモグラフィーにて乳腺と線維成分で構成される白い部分が濃く写る乳房の事で乳がんの発症率も高く、さらにマンモグラフィーによる乳がんの発見が困難になることが問題です。高濃度乳房が多い40歳代ではエコーを追加することでがんの発見率が上がると言われています。
高濃度乳房
針生検とは
乳房腫瘍が良性腫瘍か乳がんであるかの確定診断に用いられます。また得られた検体の詳細な病理検査により乳がんの特性を調べることができ、乳がん治療の方針決定に必要です。精度が高い検査ですが、乳がんの可能性を否定できない良性判定となることもあり、その場合は厳重な経過観察か、もしくは摘出生検(手術)をお勧めすることになります。
実際には、乳房の一部に局所麻酔の注射を行い、その後皮膚に2-3㎜の切開を行います。次に約2mmの太さの生検針を挿入し腫瘍の一部を切り抜きます。一つの腫瘍に対し数か所生検を繰り返し、検査は終了です。およそ10分程度の検査です。検査後は血腫という血のかたまりが出来る可能性があるため当日の「飲酒」「運動」「入浴」は避けていただきます。検査後、皮下出血斑が見られますが、数週間後には消失します。
(針生検には確実性、安全性の高い国内製品(タスク社製)を採用)
針生検
乳がん診断後の流れ
細胞診にて乳がん診断がなされた場合、針生検を行い確定診断と乳がんの特性を見ます。
採血、尿検査、心電図、肺活量、胸部レントゲンなどの基本的な身体検査を行います。
造影CT、骨シンチグラフィーにてリンパ節、肺、肝臓、骨などへの転移がないか確かめます。造影MRIにて乳房内の多発病変や乳管内への乳がんの進展を調べます。
受診の流れ
検査結果の説明について
針生検の結果説明では乳がんか良性腫瘍であったかの診断結果をお話しいたします。
針生検では乳がんの特性も調べることができます。乳がんの特性と進行度によってお勧めする治療法が変わります。
CT、MRIなどの結果説明では乳がんの拡がりや転移の有無などの状況を説明し、乳がんのステージングと手術方法について相談いたします。
ステージⅠもしくはⅡの患者さんはMRIにて乳がんの拡がりに問題なければ乳房温存手術が選択できます。放射線治療を併用した乳房温存手術は乳房切除と同等の生存率が得られます。
乳房温存手術が困難な場合は乳房切除を行いますが、乳房再建が保険適応となっており選択肢として考慮できます。当院では乳房切除の際に行うティッシューエキスパンダーの挿入とインプラントを用いた乳房再建を行っております。自家組織再建は連携する施設をご紹介させていただいております。
受診の流れ
術前の薬物療法について
乳がんの特性や進行度から抗がん剤治療が必要な方で、縮小すれば温存手術が見込まれる場合や抗がん剤の効果をみて術後の薬物療法の必要性を検討したい場合に「術前化学療法」をお勧めすることがあります。
抗がん剤治療を約半年間行った後に手術となります。抗がん剤を先に行っても生存率に影響しないことがわかっています。抗がん剤の効果によって術後の薬物治療を選択することで再発リスクをさらに改善させることができます。
受診の流れ
BRCA1/2遺伝子検査について
遺伝する乳がんは5-10%の頻度でみられます。なかでもHBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)が最も多いことがわかっています。HBOCはBRCA1/BRCA2というDNA損傷の修復に携わる遺伝子の変異が原因であり、親から子へ50%の確率で受け継がれます。
たとえばBRCA遺伝子変異がある場合、生涯で乳がんにかかる可能性は41-90%(一般では約10%)、卵巣がんにかかる可能性は8-62%(一般では約1%)と高率です。その他、前立腺がんや膵がんのリスクも高いと言われております。
検査で「陽性」と診断された場合は、
①乳房温存手術は基本的に推奨されていないこと。
②MRIを使ったより精密な術後検査やがんにかかる前に臓器を摘出するリスク低減手術が保険適用で行えること。
③HER2陰性乳癌の方で、再発高リスクの術後や切除不能または再発したときにリムパーザ®が使用できる。
など状況に応じて診療方針が変わることもありますので、患者さんのご希望によっては検査を行う意義があります。
BRCA遺伝子変異の検査は採血で行い、3割負担で約6万円程度です。「陽性」の診断となる場合、ご本人やご家族へのあらゆる影響を配慮しなければならないため、事前に「遺伝カウンセリング」を受けていただき、検査の必要性を一緒に考えていきます。「遺伝カウンセリング」をご希望の方は主治医やスタッフにご相談ください。